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ミルグラム実験
01概要カード
権威の指示のもとで、普通の人がどこまで有害な行為に従うかを調べた服従実験。
人は、権威ある者から指示されたとき、自分の判断に反してでも、どこまで従ってしまうのか。バイト先で店長の指示に逆らえなかったり、組織の中で「上が決めたことだから」と納得したりする感覚は、多くの人に覚えがあるだろう。1960年代初頭、スタンレー・ミルグラムはこの問いを実験室に持ち込み、予想を超える服従の割合を報告して大きな議論を呼んだ。その後の研究倫理のあり方を変えた実験でもある。
このページのポイント
- 普通の参加者の65%が、権威の促しで最大電圧まで進んだ
- 解釈の焦点は「服従」か「実験への信頼と疑念」かで割れている
- 現代の研究倫理では再現できず、倫理の転換点にもなった
タグ: 服従 / 権威 / 研究倫理 / ミルグラム
関連エントリ
02対話編:ヒロシとミカ
(バイト終わりの帰り道。ヒロシが店長の指示の愚痴をこぼしている)










03データ編
実験の手順
1961年、イェール大学の心理学者スタンレー・ミルグラムが行った実験である。新聞広告などで集めた一般の成人男性が「教師」役となり、別室にいる「学習者」役(実際は実験協力者の演者)が単語テストで間違えるたびに、電気ショックのスイッチを押すよう求められた。スイッチは15ボルトから450ボルトまで30段階あり、学習者の叫び声は録音された演技で、実際には電流は流れていない。教師役がためらったり止めたがったりすると、白衣の実験者が「続けてください」など決められた言葉で促し続けた。参加者はこれを「罰が学習に与える効果」の実験だと説明されていた。
結果
1963年に報告された最初の条件では、40人中26人(65%)が、学習者が反応しなくなった後も、最大の450ボルトまでスイッチを押し続けた。途中で止めた参加者も、全員が少なくとも300ボルトまでは進んでいる。実験前に精神科医らへ行った予測では、最後まで進む人はごくわずかと見られていた。条件を変えた一連の実験では、学習者との距離が近いほど、また実験者の権威が弱まるほど、服従率は下がることも示された。
解釈をめぐる議論
ミルグラム自身は、普通の人が破壊的な指示にも従ってしまうのは、権威のもとで自分の行動の責任を権威者へ移し、自らを「道具」として位置づける状態に入るためだと解釈した。一方、後の再検討では、実験の音声記録や資料の分析から、参加者の多くがショックは本物ではないのではないかと疑っていた可能性も指摘されている(ジーナ・ペリーらの調査など)。服従率の高さを「権威への服従」の単純な証拠と読むかについては、現在も議論が続いている。
倫理と部分再現
参加者に強いストレスを与えるこの手続きは、現代の研究倫理の基準(十分な説明と同意、参加者への負担の制限、倫理審査)では、そのままの形では実施できない。部分的な再現としては、倫理的配慮のため150ボルトの段階までで中止する形を取ったジェリー・バーガーの2009年の研究があり、そこでも同程度の割合の参加者が継続の意思を示した。実験そのものは、服従の研究であると同時に、研究倫理の転換点となった事例としても扱われている。
04AI分析
意見が分かれる分岐点
分かれ目は、結果を「普通の人が権威に服従する証拠」と読むか、「実験状況への信頼や、本物ではないという疑念が混ざった結果」と読むかである。アーカイブ資料の再検討が進むにつれて、後者の要素をどう見積もるかが論点になっている。
前提の違い
- 人の行動は「性格」で説明すべきか、「状況」で説明すべきか
- 実験室の特殊な状況で得られた結果を、日常生活にどこまで一般化できるか
現代への接続
- 職場で上司の指示に逆らえず、不正や無理な業務に加担してしまう問題
- 肩書や制服、専門家の言葉が、SNS上でもそのまま信用されやすいこと
- 大学の研究倫理教育で、参加者保護の出発点となる事例として扱われること
※ AI分析は事実の整理と解釈の提示であり、特定の立場への断定ではありません。
05出典・参考文献
- スタンレー・ミルグラム “Behavioral Study of Obedience” (Journal of Abnormal and Social Psychology, 1963)
- スタンレー・ミルグラム『服従の心理学』(Obedience to Authority, 1974)
- Jerry M. Burger “Replicating Milgram” (American Psychologist, 2009)
書籍リンクは収益ゾーンとしてこの出典セクションに置く方針(試作では実際のリンクは入れていません)。