モンティ・ホール問題
01概要カード
ドアの選択を変えるかどうかで当たる確率が変わるのはなぜかを問う、直感と情報更新の問題。
ドアが3つある。1つのドアの向こうには新車が、あとの2つにはヤギがいる。あなたは1番のドアを選んだ。
すると、答えを知っている司会者が3番のドアを開けてヤギを見せ、「ドアを変えますか?」と聞く。直感では「残りは2つだから五分五分」と感じるが、実際には変えた方が当たる確率が2倍になる。
確率の計算問題であると同時に、情報を受け取ったとき私たちの直感はなぜ更新に失敗するのかを問う思考実験である。
このページのポイント
- 問いの核心:残った2つのドアは、本当に対等か
- 直感の反転:ドアを100個に増やすと、同じ理屈でも直感の答えが変わる
- 現代への広がり:検査の解釈やデータの偏りなど、情報の更新が要る場面すべてに通じる
タグ: パラドックス / ベイズ推論 / 直感 / 確率
関連エントリ
02対話編:ヒロシとミカ
(ゼミ室。昼休み、ミカがスマホで昔のクイズ番組の再放送を見ている)









03データ編
定式化
原型は統計学者スティーブ・セルヴィンが1975年に学術誌『The American Statistician』へ寄せた問題である。
アメリカのテレビ番組『Let's Make a Deal』の司会者モンティ・ホールの名を取り、モンティ・ホール問題と呼ばれる。
1990年にマリリン・ボス・サヴァントが雑誌『Parade』のコラムで紹介して広く知られるようになり、「変えるべきだ」という正解に対して、数学の博士号を持つ人を含む多数の読者から反論が寄せられたことでも知られている。
なぜ変えると2倍になるのか
最初に選んだドアが車である確率は3分の1、ヤギである確率は3分の2である。司会者は答えを知っていて、必ずヤギのドアを開ける。この条件のもとで場合分けすると、次のようになる。
「変える」が勝つのは最初にヤギを選んでいた場合のすべてであり、その確率は3分の2のままである。残った2つのドアは対等ではなく、最初に選んだドアの確率は3分の1に固定され、残りの3分の2が開いていないもう一方のドアに集中する。
| 最初の選択 | 確率 | そのままにする | 変える |
|---|---|---|---|
| 車 | 3分の1 | 当たり | はずれ |
| ヤギ | 3分の2 | はずれ | 当たり |
バリエーション
ドアを100個に増やすと、直感の働き方が変わる。最初に当てる確率は100分の1で、司会者が98個のヤギのドアを開けて1つだけ残せば、その1つに残りの確率が集中する。3つの場合と理屈は同じだが、こちらでは多くの人が「変えるべきだ」と感じる。
一方、司会者が答えを知らず、偶然ヤギのドアを開けただけなら、残った2つは本当に対等になり、変えても確率は変わらない。司会者が「知っている」という条件そのものが情報を生んでいる。
なお、1959年にマーティン・ガードナーが紹介した三囚人問題は、これと構造が同じ問題である。恩赦される囚人の名を看守が漏らす場面に置き換わっており、ここでも情報の出し方が確率を書き換える。
議論のポイント
争点は計算そのものよりも、「確率とは何を表しているのか」にある。確率はドアそのものの性質ではなく、私たちの知識の状態を表すものであり、新しい情報を受け取れば書き換えなければならない(ベイズ更新)。
ところが人は、残った選択肢の見た目の数(2つ)に引きずられ、情報の非対称を見落とす。この問題が思考実験として面白いのは、間違える原因が知識不足ではなく、直感の更新の仕方の癖だという点にある。
04AI分析
意見が分かれる分岐点
分かれ目は、「残った選択肢は常に対等だ」という思い込みを手放せるかどうかである。司会者の開示が情報を持つ以上、2つのドアの確率は対等ではなく、最初に選んだ時点の配分(3分の1と3分の2)がそのまま残ると考えるかどうかで答えが分かれる。
前提の違い
- 確率は物事そのものの性質ではなく、「私たちが何を知っているか」の状態を表すと見るか
- 他者の行動は、その人が持っている情報の表れとして、確率の計算に入れるべきか
- 「場合の数が同じなら確率は同じ」という対称性の直感に、どこまで頼ってよいか
現代への接続
- 医療検査で陽性が出たとき、実際の確率は有病率(事前の確率)に大きく左右されるが、精度の数字だけで判断してしまいがちである
- ベイズ統計やデータ分析で、観測された情報に応じて確率を更新していく考え方の入口になる
- 交渉やゲームでは、相手が「選ばなかった行動」にも情報が含まれている
- AIの予測でも、集め方に偏りのあるデータは、集めた側の事情を一緒に含んでいる
※ AI分析は事実の整理と解釈の提示であり、特定の立場への断定ではありません。
05出典・参考文献
- スティーブ・セルヴィン『The American Statistician』誌への書簡(1975年)
- マリリン・ボス・サヴァント『Parade』誌コラム “Ask Marilyn”(1990年)
- ジェイソン・ローゼンハウス『The Monty Hall Problem』Oxford University Press(2009年)
- マーティン・ガードナー『Scientific American』“Mathematical Games”(1959年、三囚人問題)
書籍リンクは収益ゾーンとしてこの出典セクションに置く方針(試作では実際のリンクは入れていません)。