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トロッコ問題

01概要カード

暴走するトロッコから5人を救うために、進路を変えて1人を犠牲にすることは許されるのかを問う問題。

暴走したトロッコが、線路の先にいる5人の作業員に向かって進んでいる。あなたはレバーの前に立っていて、引けば進路が切り替わり、5人は助かる。ただし、切り替わった先の線路には1人の作業員がいる。レバーを引くべきか。単純な数の比較では答が出そうでいて、設定を少し変えるだけで多くの人の直感が反転する。善し悪しを「結果の総量」だけで測れるのか、それとも結果がよくてもしてはいけないことがあるのかを問う、現代倫理学で最も有名な思考実験である。

No. 029 分野 倫理学 種別 問題・思考実験 時代 20世紀 難易度 入門 初出 フット 1967年論文

このページのポイント

タグ: 功利主義 / 二重結果原理 / 実験哲学 / フット

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02対話編:ヒロシとミカ

(帰り道の駅のホーム。ポイント故障で電車が遅れている)

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ヒロシ
電車、ポイント故障で遅れてるって。ポイントって、あの線路の切り替えのやつか。
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ミカ
そう。その「切り替え」で有名な思考実験があるよ。トロッコ問題。暴走トロッコが5人に向かってて、レバーを引けば進路が変わって5人は助かる。でも替わった先には1人いる。
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ヒロシ
引くでしょ。5人と1人なら、数が多い方を助けるのが普通じゃない?
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ミカ
じゃあ変形版。君は歩道橋の上にいて、隣に体の大きい人がいる。その人を突き落としてトロッコを止めれば5人が助かる。結果は同じ1人の犠牲で5人が助かる。やる?
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ヒロシ
……無理。それはさすがに手が出ない。あれ、俺さっきと言ってること違う?
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ミカ
そこが面白いところで、調査でも多くの人がレバーは引くけど歩道橋では押さない、って答えるらしい。結果が同じなのに、ね。
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ヒロシ
レバーだと「進路を変えた結果」って感じで、押すのは「この人を使って止めた」って感じがするからかな。
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ミカ
私も最初は数の問題だと思ってたけど、行為の形が判断に入り込んでるのは確かだと思う。説明しきれないけど。
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ヒロシ
自動運転が事故を避けるときの判断にも使うって聞いたことある。現実のレバーを機械が引く時代か。
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ミカ
で、電車はまだ来ないね。私たちはどっちの線路でも、とりあえずここで待つしかないやつ。

03データ編

定式化

原型は哲学者フィリッパ・フットが1967年の論文で提示した事例である。暴走する路面電車(トロッコ)の運転手は、進路を変えれば目の前の5人の代わりに別線路の1人を死なせてしまう、という形だった。1985年、ジュディス・ジャーヴィス・トムソンがこの事例を取り上げて「トロッコ問題(The Trolley Problem)」と名づけ、傍観者がレバーを引く形や歩道橋型など、多数の変形とともに本格的な議論の対象にした。

バリエーションと直感の違い

設定の中身を少し変えるだけで、多くの人の判断は大きく揺れる。実験哲学や心理学の調査では、レバー型ではおおむね9割前後が進路変更を支持するのに対し、歩道橋型で突き落とすことを支持する人は1割前後に下がると報告されている。結果として生じる犠牲の数は同じなのに、である。

型求められる行為犠牲で助かる人数多くの人の直感
レバー型レバーを引いて進路を切り替える1人の犠牲で5人切り替えてよい、が多数
歩道橋型隣の人を突き落としてトロッコを止める1人の犠牲で5人してはいけない、が多数
臓器移植型健康な1人の臓器を5人に移植する1人の犠牲で5人してはいけない、が大多数

議論のポイント

この差を説明する候補としてよく挙げられるのが「二重結果原理」である。悪い結果を意図して引き起こすことと、よい行為の副作用として悪い結果を予見しつつ許容することとは、道徳的に違う、という考え方である。レバー型の死は副作用として予見されたものだが、歩道橋型ではその人の身体がトロッコを止める「手段」として意図的に使われている、と整理される。

これに対して、区別は直感の言い換えにすぎないという批判や、感情的な拒否感が判断を歪めているという心理学的説明もあり、決着はついていない。トムソン自身も後年の著作で立場を修正しており、議論は現在も続いている。

現代への接続

トロッコ問題は哲学の教室を出て、実験哲学・心理学の調査題材として世界中で使われてきた。2018年には、自動運転車が避けられない事故でどう判断すべきかをめぐる大規模オンライン調査「モラル・マシン」の結果が『ネイチャー』誌に報告され、文化圏によって判断の傾向が異なることも示された。

もっとも、現実の自動運転の設計がトロッコ問題そのものだというわけではない。確率的なリスク配分の問題を、確定的な二択の思考実験にそのまま置き換えることへの批判もある。思考実験は現実の設計図ではなく、私たちの道徳的直感の構造を点検するための道具として位置づけるのが穏当である。

04AI分析

意見が分かれる分岐点

分かれ目は、「よい結果の総量」だけで行為の善し悪しが決まるのか、それとも結果がよくても踏み越えてはいけない行為の形があるのか、という点にある。レバー型と歩道橋型で直感が分かれる事実そのものが、この対立を映している。

前提の違い

現代への接続

※ AI分析は事実の整理と解釈の提示であり、特定の立場への断定ではありません。

05出典・参考文献

書籍リンクは収益ゾーンとしてこの出典セクションに置く方針(試作では実際のリンクは入れていません)。