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アッシュの同調実験
01概要カード
明らかな誤答を全員が言ったとき、人は自分の目より多数派に合わせるのかを調べた同調実験。
線の長さを比べるだけの簡単な課題で、自分の目には正解がはっきり見えている。ところが、周りの全員がそろって違う答えを言ったらどうなるか。ソロモン・アッシュが1951年に行った同調実験は、集団の圧力が個人の判断にどこまで入り込むかを測った古典である。結果は「人は流される」という単純な話ではなく、流される度合いが人によって大きく違うこと、そして全員一致が崩れるだけで圧力が大きく弱まることを示した。
このページのポイント
- 勝負試行での同調率は約32%。一方で一度も同調しなかった人も約25%いた
- 多数派の人数の効果は3〜4人で頭打ちになる
- 異議者が1人出て全員一致が崩れると、同調は大きく弱まる
タグ: 同調 / 集団圧力 / アッシュ / 全員一致
関連エントリ
02対話編:ヒロシとミカ
(ゼミ帰りの帰り道。ヒロシがグループLINEの集合時間で失敗した話をしている)










03データ編
実験の手続き
1951年、社会心理学者ソロモン・アッシュは、スワースモア大学で線の長さの判断をめぐる実験を行った。参加者は、基準となる線と3本の比較線を見せられ、基準と同じ長さの線を声に出して答える。課題自体は簡単で、1人で答えればほぼ間違えない。
ところが、7〜9人のグループのうち本当の参加者は1人だけで、残りは全員サクラであり、決められた試行では全員がそろって明らかな誤答を口にする。本当の参加者は後ろの方の席で、みんなの答えを聞いてから自分の答えを言うことになる。全員一致の誤答と自分の目が食い違ったとき、人はどうするか――それを測る実験である(全18試行のうち12試行がこの「勝負試行」)。
結果:流される人と、流されない人
勝負試行で多数派に合わせた誤答は、試行全体の約32%だった。一方で、参加者の約75%は少なくとも1回は同調し、一度も同調しなかった人も約25%いた。サクラのいない統制条件では誤答は1%未満であり、誤答が課題の難しさから来たのではないことははっきりしている。
つまり結果は「みんな流される」でも「みんな流されない」でもなく、その中間に大きく散らばっている。同調し続けた人、途中で独立を取り戻した人、最初から最後まで自分の目を信じた人が同じ実験の中にいた。
同調を左右する条件
アッシュは条件を変えて、同調を強めたり弱めたりする要因も調べた。多数派の人数は、3〜4人までは同調を強めるが、それ以上増やしても効果はあまり伸びない(頭打ちになる)。
大きな効果があったのは、全員一致が崩れることである。サクラのうち1人でも正解(あるいは多数派と違う誤答)を言うと、同調率は大きく下がった(およそ4分の1程度まで)。味方の存在そのものより、「一致」が壊れることが効いたと解釈されている。また、答えを紙に書く私的な回答にすると同調は減り、課題が曖昧になるほど同調は増える傾向も知られている。
その後の解釈と再検討
その後の研究では、同調の仕組みは大きく2つに整理された。集団から外れることを避けたい「規範的影響」と、自分の判断に自信がないときに他者の答えを手がかりにする「情報的影響」である(ドイッチュとジェラード、1955年)。
また、ボンドとスミスの1996年のメタ分析では、アッシュ型の実験の同調率は時代とともに下がる傾向と、集団主義的な文化圏で比較的高い傾向が報告された。同調率は人間の普遍的な弱さというより、時代や文化、状況によって動く量として捉え直されている。
04AI分析
意見が分かれる分岐点
分かれ目は、同調を「分かっていて合わせる迎合」と読むか、「集団の答えを情報として取り込む判断」と読むかである。アッシュ自身は、独立を保った参加者の多さにも注目しており、実験は服従の証明としてだけではなく、独立の記録としても読める。
前提の違い
- 実験室での見知らぬ者同士の集団を、日常の顔見知りの集団にそのまま一般化できるか
- 誤答を「集団への迎合」と見るか、「自分の知覚への信頼の低さ」と見るか
現代への接続
- SNSの「いいね」数やトレンドを見てから意見を決める場面
- 全員一致の空気が強く、反対意見が言いにくい会議や組織
- ネット上で多数派の評価が雪だるま式に固まっていくレビューやランキング
- 異議を唱える人を1人置くことで議論を活性化させるファシリテーションの工夫
※ AI分析は事実の整理と解釈の提示であり、特定の立場への断定ではありません。
05出典・参考文献
- Asch, S. E. (1951). “Effects of group pressure upon the modification and distortion of judgments.” In H. Guetzkow (Ed.), Groups, Leadership and Men.
- Asch, S. E. (1956). “Studies of independence and conformity: A minority of one against a unanimous majority.” Psychological Monographs, 70(9).
- Deutsch, M., & Gerard, H. B. (1955). “A study of normative and informational social influences upon individual judgment.” Journal of Abnormal and Social Psychology, 51(3).
- Bond, R., & Smith, P. B. (1996). “Culture and conformity: A meta-analysis of studies using Asch's line judgment task.” Psychological Bulletin, 119(1).
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